
カウンセラー兼、心理療法士の尾崎斗志さんは、自身も子ども時代から生きづらさを抱え、その経験を活かして多くの人の心に寄り添ってきました。
今まで延べ1万件以上の実績を積まれた尾崎さんがどのようにしてカウンセラーになったのか。また実際のカウンセリング内容はどのようなものなのか、お話を伺いました。
心の整理から始まり、悩みや症状の改善へと導く心理療法
――カウンセリングと心理療法とは何か教えてください。
カウンセリングと心理療法は、一般的には同じように捉えられがちですが、正確には違います。カウンセリングでは、たとえば人間関係の悩みや漠然とした将来への不安を抱えている方などに対して、丁寧に話を聞き、共感することでご自身の中にある答えを引き出していきます。 その人本来の持っている力を引き出して解決に導いていくものですが、心理療法はもう少し指導的な形をとります。
心理療法では、うつや自律神経失調症、不安障害、強迫性障害など、実際に体や精神に何らかの症状が出ている方を対象にしています。 たとえばパニック発作で電車に乗れなくなった方には、段階的に不安に慣れていく行動療法を用いたり、強迫性障害で手洗いが止められないなどという方には、思い込みと現実との歪みを修正したりする具体的なアプローチを行います。 治療的な側面が入ってくるという点が大きな違いですね。
最初はカウンセリングを受ける方も、聞いてもらうだけでは改善に導かれないと気づき、心理療法が適していることに気づかれる方も多いです。
ひとりで抱え込まないで──相談に訪れる人たちの悩みとは
――実際に相談される方は、どのような悩みを抱えている場合が多いですか?
主にうつやパニック、強迫神経症、自律神経失調症、気分障害といった症状を持つ方が受けられます。
自律神経失調で頭痛やめまいといった症状が出ている場合は、考え過ぎな人が多かったりします。うつの場合は一般的にエネルギー切れと言われていますが、なぜエネルギー切れになっているかというと、完璧主義でやりすぎてしまっている人が多いんです。自分では普通だと思っていることが、人から見ると頑張りすぎだったりするので、そこに気づいてもらうようなカウンセリングをしています。
また、感情のコントロールがうまくいかないと悩む方もいらっしゃいます。 たとえば、怒りや嫉妬などの不快な思いを「感じてはいけない」と無意識に抑え込んでしまっているケースです。 感情は抑圧しても消えるわけではないので、心のタンクにどんどん溜まっていきます。そのタンクが満杯になってしまうと、心にゆとりがなくなり、些細なきっかけで怒りが爆発してしまうんです。 それは目の前の出来事に対してだけでなく、過去から抑え込んで満杯になった感情が溢れ出しているサインでもあるんですよ。我慢強い方が多いですね。
――尾崎心理療法室では、具体的にどのような心理的療法やアプローチを用いてカウンセリングを行っていますか?
大きくは5つの療法を用いています。まずカウンセリングから始めて、自律訓練法、行動療法、催眠療法、交流分析です。症状によっては別のアプローチをする場合もありますが、基本的にはこの5つですね。
初期段階では聞き取りを行い、幼少期の親子関係や親御さんの性格、子供の頃の環境などを聞きます。症状を見れば、大体その方の性格もわかってくるようになりました。
――プログラムを受けられたクライアントさんにはどのような変化がありますか。
一時的に症状が出ているような人は、比較的早くご自身の本来の力を取り戻して卒業していかれます。対人恐怖症や不安から来る緊張が和らいで、人と話すことへの抵抗が少なくなっていき、自己肯定感が高まって無価値感から解放され、自信を持って物事に取り組めるようになる、といった変化ですね。
ほかの方の例でいうと、当初の症状が改善して取り組みたい課題が深みを増して、その方の人生のテーマのようなものに向き合い始める方もいらっしゃいます。より自分を高めたいという向上心から悩みの内容が変化していき、自己成長の意欲が強くなっていくようなパターンですね。
自分でできる心を整えるためのワーク
――アフターケアはありますか?
基本的には4回で1クールとしていますが、離れていくことに不安があったりまた話を聞いて欲しいという方がいたら、もちろん相談を受けています。
あとは、カウンセリングを受けたあとに自宅でご自身でもケアが出来るよう、相手に合わせた誘導音声をお送りしています。
――誘導音声とはどのようなものですか?
その方の症状や悩みに合わせて、BGMを流しつつ私が直接誘導の音声を吹き込んだ、世界にひとつだけの教材です。誘導の言葉には、催眠療法、自律訓練法、行動療法の要素が組み込まれています。催眠と聞くと心を操られるのではないかと怖がられる方もいますが、決してそのようなものではなくて、とても症状が強くあまりにもしんどい方にも、少しづつ心をゆるめていく手段として、非常に有効な手法です。
たとえば、怒りやイライラが溜まっている方であれば、その感情を炎に見立てて、50メートルくらい離れた場所から、その炎が燃えているのをただ眺めるといったイメージ誘導を行います。
そして落ち込みや不安が強い方には、小川の岸辺に座って、ダンボール箱に不安な気持ちを詰め込んで、川に流れていくイメージをするといった情景をイメージしてもらいます。どちらも感情を切り離して、客観的に自分を見る練習になるんです。
イライラや悲しみがつのっていると頭がのぼせて手足が冷たい状態が多かったりするんですけど、感情が落ちつくと頭は涼しく手足は温かい状態になるんです。そういった自律神経が整った状態に導いていきます。
夜寝る前などにリラックスして聞いていただくことで、普段はアクセスしにくい潜在意識という無意識の領域に働きかけ、凝り固まった考え方の癖を無理なく自然に緩めてあげる誘導テキストをお作りしています。
カウンセラーの道へ進んだきっかけ──元々は自分の悩みを改善したかった
――カウンセラーだけでなく、心理療法士を目指そうと思ったきっかけを教えてください。
実は私も幼少期から対人恐怖症や無価値感といったものを抱えていて、生きづらさを感じていました。小中学生の頃から心理学の本を読んだりしていましたが、根本的な解決は出来ないまま社会人になり、日々葛藤していたんです 。
そんな中、知人の紹介でたまたま医療大学病院で働いていた時、ある先生とお話をしている中で「君はすごく聞き上手だから、カウンセリングの仕事に向いてると思うよ」と言ってもらったことがきっかけです 。
その時はまだカウンセラーになろうとまでは考えていませんでしたが、この生きづらさの理由を勉強して、もっと楽に生きられるようになりたいと思い、まずは自分のために学んでみようと思ったのが大きな転機となりました。
――カウンセラーになるために、どのような勉強をされてきましたか?
最初に行ったのは日本プロカウンセリング協会というところで、カウンセラーになるためのプログラムの全工程を受講しました。 そこで、幼少期の親子関係が大人になってからも影響を与えることを学び、自分がなぜ人に対して緊張してしまったり無価値観が出てきてしまうのかという根本的な原因に気づかせてもらうことができたんです 。
ただ、原因がわかっただけではカウンセラーとしてはまだまだなので、実際の現場でどうやってクライアントさんが立ち直っていくのかという、もっと実践的な部分を学びたいと思いました 。 そこである民間の心理療法室を見つけて、2年間のインターン期間を過ごさせてもらいました 。
教科書での勉強だけではわからない、現場での具体的なアプローチや、実際に人が回復していく過程を見て学ぶことができ、このたくさんの現場経験が今の私のカウンセリングの土台になっています。
――カウンセラーになって気づいたことはありますか。
インターン期間が終わりそのままカウンセラーとして働くことにはなりましたが、決して自信があったわけではありません。「今の自分で人をサポートすることができるんだろうか」と思っていました。でも、カウンセラーとクライアントさんという双方の交流の中で、カウンセラー自身も成長させてもらえていることに気づいたんです。
人のことは客観的に見れるので「なぜつまずいてるのか」「そういう考え方をしていたらしんどいよね」ということが見えてくるようになって、私はそこで気づいたクライアントさんの心の癖を改善に導くと共に、それによって「自分も気を付けよう」と気持ちを切り替えることができて、お互いに成長していける感覚がありました。
相手に感謝してもらえるけれども、自分の根本の悩みも克服できていき、こちらもクライアントさんに対して感謝の気持ちが芽生えていきました。
尾崎心理療法室の今後の展望──心と心をつなぐ関わり
――今後取り入れていきたいもの、目指していることなどがあれば教えてください。
今、世の中にAIが出てきて、相談事も無料で答えてくれるようになってきました。この業界だけでなく、いろんなものがAIに変わっていく時代だと思います 。でもやっぱり人間は「人と人との交流」があってこそのものだと思うんです 。
この業種だからこそ、AIにはできない「心で人に寄り添うということ」を大切にしていきたいと思っています。
――尾崎心理療法室は、悩みを抱える人たちにとってどのような場所でありたいですか?
私も自分がつらかったときに、恩師に出会って心理療法を学んだことが、自分の心が変わる大きなきっかけになりました。その出会いは、今でも私の中に大切に残っています。
なので私のクライアントさんにとっても、「尾崎心理療法室があったから人生が良くなって、変われた!」と思い出してくれるような場所になれたら嬉しいですね。
「悩みや症状は、自分を取り戻すチャンス」
――最後に、悩みを抱えている方へメッセージをお願いします。
私もずっと悩んできた1人として、その最中は本当に苦しみました。なにもかも投げ出してしまいたいと思うほどつらい気持ちになることも、私にもよくわかります。
でも、症状や悩みというのは「その考え方は必要ないよ」という、本来の自分の姿に気づくチャンスなんですよね。それがあったからこそ自分本来の力を発揮できるようになって、また次の素晴らしい経験が出来るようになる。だから頑張って乗り越えてみると、どんなこともいい経験になると思うんです。
なので今ある課題をひとつひとつクリアしていき、いつかそれが思い出話にできるくらいまで、一緒に乗り越えていく存在でありたいと思っています。
1人で悩まず、ぜひ気軽に相談してみてください。

コメント